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オーストラリアの公衆衛生学に興味を持ち、留学して1年間で修士を取得

大学:シドニー大学
専攻:公衆衛生
留学期間:2009年2月〜2010年12月

1974年生まれ、山梨県出身。大学院の研究室で助教を勤め、現役の医師でもある。多くの医師がアメリカ、イギリスを中心に公衆衛生学を学ぶ中、オーストラリアを軸とした研究に強く興味を持ち、長期研修という形でシドニー大学大学院に留学。1年間で修士を取得し、帰国後は特任准教授の傍らエコチル調査など様々な研究に携わっている。2011年5月に行われたシドニー大学の卒業式にも出席した。

帰国後は、語学を活かして国際学会に積極的に参加

カブラマッタというベトナム人街を訪れたときに、揚げバナナを食べているところ

シドニーで行われた学会で発表

「Returning home seminor」という留学生向けの、帰国に向けたセミナーに出席。みんな一応ガウンを着ていました

同じくセミナーのときに撮った集合写真

友人とPubで飲んでいるところ

Q:留学前の経歴を教えて下さい。

A:2000年に山梨医科大学を卒業後、産婦人科の臨床をやりながら2005年に大学院を修了し、博士(医学)を取得。その後、臨床を離れて、山梨大学医学部社会医学講座に助手および助教として在籍していました。日本では、公衆衛生学と疫学を専門としていましたが、なかなか系統的に学ぶ場がなく、さらに研究者として国際学会に出席した時に、英語でディスカッションできるスキルを身に付けたいと考え、留学しました。

Q:シドニー大学・大学院を選ばれたのはなぜですか。

A:米国の公衆衛生大学院は2年コースが大半ですが、オーストラリアの大学院は1年でMaster of Public Health(MPH)を取得可能であったことと、その中でも最古のシドニー大学は、連邦政府やNew South Wales州政府に数多くの人材を輩出していたことから選びました。

Q:シドニー大学大学院の「公衆衛生学」の特徴を教えてください。

A:留学するまでオーストラリアにおける公衆衛生の位置づけがよくわかっていなかったのですが、国を挙げて喫煙対策や子宮頸がん予防などに取り組んでおり、そのための人材育成をSchool of Public Healthで行っているところがオーストラリアの公衆衛生学の一番の特徴であり、優れている点です。
私は日本で、地域におけるさまざまな健康問題について、現場の保健師さんと一緒にその予防と早期発見に取り組んでいますが、オーストラリアではHealth Promotion(健康増進活動)を積極的に行っており、理論だけでなく活動の事例を学べることが大きな魅力でした。

Q:公衆衛生学のプログラムでは、具体的にどんな勉強をするのでしょうか?

A:科目によってスケジュールは異なりますが、週1度の講義とチュートリアル、Essay、テストで評価されるものが多かったです。選択科目では、Semester中に1〜2回のWorkshopが朝から夕方まで行われ、毎週Onlineでチュートリアルが行われるものもありました。日本の大学に比べ、自由な発想と根拠に基づいた事例を用いて、さまざまな健康問題の解決方法などを考えるディスカッションが多かったです。

Q:選択科目を教えてください。

A:1st Semesterは必修科目のみ。疫学や生物統計学の基礎、医療経済学、政策立案などの基本を学びます。2nd Semesterでは選択科目が中心となり、私はObesity(肥満)やPhysical Activity(身体活動)に関する科目と、応用的な生物統計学の科目を選択しました。他にも、Master of International Public Health(MIPH)の科目である感染症対策や、途上国における医療活動などについて学ぶことも可能でした。

Q:その中で、特に印象に残っている科目は?

A:2nd Semesterで選択した肥満に関する科目は、私が妊婦の生活習慣と子どもの肥満を研究テーマとしていることもあり、とても興味深いものでした。子どもに限らず大人も含めて、どのようにして肥満予防を行っていくのか、さまざまな観点からディスカッションし、実際にオーストラリアで行われている介入研究にも触れることができ、大変勉強になりました。この科目はOnlineでチュートリアルを行ったのですが、クラスメイトたちが一生懸命調べた根拠をもとにさまざまな発表をしており、とても刺激を受けました。

Q:リサーチや課題で印象的だったのは?

A:Physical Activityに関する科目では「提示されたシナリオに基づき、運動習慣を改善するための研究デザインを考えなさい」という課題が出ました。WorkshopやOnlineのチュートリアルで学んだことを基礎に、新たな介入研究をデザインしていくものでした。既存の知識だけでなく、新たな研究や介入方法を考えていくという、とてもCreativeなもので、非常に印象に残っています。

Q:クラスメイトのバックグラウンドは?

A:MPHとMIPHは共通の科目が多く、両方のコースで友人ができました。MPHはオーストラリアにおける公衆衛生、MIPHは途上国における公衆衛生をテーマにしていたので、MPHにはオーストラリアの学生が多く、MIPHは留学生が多かったです。性別では女性が多く、留学生の中に医師がいたものの、決してMajorityではなく、看護師や薬剤師といった職種の人が多かったです。また学校の先生やAccountingを学んできた人など、医療以外のBackgroundを持つ人も大勢いました。

Q:印象に残った先生はいましたか?

A:生物統計学の中で、生存曲線に関する科目を担当した若い女性の先生がいたのですが、講義が非常にわかりやすく、Logicもしっかりしており、大学で講義をするものとして見習うべき点がいろいろとありました。生物統計学は仕事で使うことがありますし、彼女をはじめとする先生方と知り合えたことは、その後の仕事の上でも大変有意義でした。

Q:日本の大学と大きく異なると感じた点はどんなことでしたか?

A:公衆衛生に関して言えば、スタッフの多さ、そしてそれぞれが専門領域を持ちつつ、疫学、生物統計学などすべての基礎になる部分については、確実な知識を持っていることに驚きました。また、講義やチュートリアルでは、学生から出る質問の多さなど、Interactiveである点が大きく異なると感じ、大学で教える立場の者として、かなり参考になりました。

Q:学業以外ではどのように生活を楽しみましたか?

A:現地の学生や留学生たちとSydneyのいろいろなRestaurantに行ったり、PubでBeer片手に語り明かしたりと、シドニーで出会った日本人の友人を含め、日本にいたら接することのできないBackgroundの人たちと、それぞれの人生などについて語り合う時間をたくさん共有できたことが、学業以外で最も充実していたところだと思います。

Q:留学で学んだことが、現在の仕事でどのように活きていると思いますか?

A:留学のモチベーションが「学会でDiscussionできるようになること」だったので、留学で身に着けた英語力は国際学会での活動に大いに役立っています。英語で世界中の研究者とDiscussionできるようになり、自分の研究内容をさまざまな人に伝え、多くの情報を得ることができるようになりました。

Q:留学前と留学後では、仕事内容にどのような変化がありましたか?

A:帰国して大学に復帰後は、大学に新しく設置された「出生コホート研究センター」の特任准教授として着任し、環境省が行っている「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の甲信ユニットセンターの副センター長として活動しています。これまでの仕事に加えて、アメリカでの学会での情報収集に派遣されるなど、留学という経験を活かすチャンスが増えています。

Q:公衆衛生学を学ぶうえで、オーストラリアを選択してよかったと思う点は?

A:前述したように、喫煙対策、また子宮頸がん予防などについては、国を挙げて取り組んでおり、そのための人材育成をSchool of Public Healthで行っているところは、オーストラリアの公衆衛生学の一番の特徴であり、優れている点です。一方で、身近な地域レベルでもさまざまな調査研究、健康状態を改善するための介入などを行っています。国レベルからコミュニティレベルまで、さまざまなレベルの公衆衛生を学ぶことができるという点で、オーストラリアを選択して良かったと感じています。

Q:大学院留学は、鈴木さんの人生にとってどんな時間だったのでしょうか?

A:医師、研究者として無我夢中で駆け抜けてきましたが、これまでは目の前にあることを片づけることで精いっぱいでした。留学期間中に、自分の経験や考えを、さまざまな人の意見を聞きながら整理することができ、今後の目標を具体的に描くことができたので、とても有意義で貴重な時間だったと思います。「もう少しいたい…」と思うくらいの期間だったのがちょうどよかったのかもしれません。

Q:5月に行われる大学の卒業式に出席予定とのことですが、オーストラリア再訪にあたり、楽しみにしていることはありますか?

A:やはり一緒に学んだ友人たちと再会できることです。Part timeで学んでいたもっとも仲の良かった友人には、卒業式にGuestとして出席してもらうように頼んであります!

Q:今後のお仕事の展望などお聞かせください。

A:私は研究者でもあるのですが、一方で大学の教員ですので、研究だけでなく、教育でも留学経験を活かしていきたいと考えています。具体的には、これから留学したいと考える学生にアドバイスをしたり、また、途上国の学生に英語で疫学や公衆衛生学を教えたいとも考えています。そのために英語の能力を維持すべく、国際学会などには積極的に参加する予定です。

Q:オーストラリアの修士留学を検討中の皆さんに、メッセージをお願いします。

A:医師として留学を考えたときに、MPHを取得しようとする人は少ないですし、オーストラリアを選択する人は本当に少ないと思います。しかし、日本ではSystematicに学べない公衆衛生を基本からしっかり学ぶにはとてもいい国だと思います。医師でなくても、人々の健康に貢献したいという思いがあれば、オーストラリアで公衆衛生を学び、その成果を日本で活かしていくことは可能です。海外で予防医学、公衆衛生を学びたいと考えている皆さん、オーストラリアも有望な選択肢の一つとして検討してください!